インターネットの経路ネタ その1

@_asami

授業|2025-11-25|最終更新日: 2025年11月27日|
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Q.ネットワークの範囲で授業ネタに困ることが多いんですが…

と聞かれることが多くて。 IPの仕組みやサーバーに関するネタをあれこれとよく話すんですが、経路に関するネタはあまり興味を持たれず悲しいので、ここに記しておこうかと。
※別件ですが、千葉県のlg.jpサーバー問題はかなり改善されました。ありがとう熊谷知事!本当に!!(過去ログ参照)
 

1.tracerouteだけでも面白い

  • ログを読んでみよう サーバーの物理的な設置場所が事前にわかるものにTracerouteするといい。 (学校内で使っているWebサーバーとか。)
    • >tracert cis.kashiwanoha.ed.jp

       
 
 
  • 結果をMAP(現実)に落とし込んでみよう
    • notion image
      今回使ったのは
      Open Visual Traceroute. ※要JAVA。画像は公式Webサイトより。
       
      Tracerouteの各ホップの位置をIPから推定して、MAPにPinを立ててくれる。
      ネットワークを旅する様子がアニメーションとして可視化されるので結構楽しい。
      notion image
      ※左図はcis.kashiwanoha.ed.jpを検索した結果。CloudflareのProxy(CDN)を使っているので、アメリカが終着点となる。
      notion image
      宮内庁を検索した結果。
       
      内閣府も千葉県も、終着点はアメリカだった…。 実は日本国内で完結するサーバーを探す方がムズカシイ
 
 
  • 意味を探ってみよう
     
     
    • AIに解説させてみよう 結果をAIに張り付けて解説させるのも面白いです。 ホスト名が出ていないものを読み解くのも面倒ですし…各自で遊べますし!
      • プロンプト「トレースルートの結果を解説して」 ※読みにくいです

        「トレースルートの結果を解説して」

        いいトレースです!これは 自宅 → NTTぷらら網 → NTTグローバルIPバックボーン(GIN)→ Meta(=Facebook/Instagram) 東京POP → Instagramエッジ という王道ルート。各ホップを読み解きます。

        ざっくり全体像

        • 1〜4: 自宅LAN → ぷらら(NTTのISP)アクセス網
        • 5〜7,9〜10: NTTの国際バックボーン gin.ntt.net(東京拠点内でルータ間を移動)
        • 10以降: tfbnw.net(MetaのAS32934)へ流入、東京POP内を数ホップ進んで instagram のエッジ に到達

        各ホップ解説

        1) 192.168.30.1(1/4/24ms)

        • 自宅の NAT/ホームルータ。私用アドレスなので妥当。
        • 24ms は単発のバースト(測定瞬間の処理待ち)。問題なし。

        2) i118-21-182-55.s99.a049.ap.plala.or.jp [118.21.182.55](7/5/4ms)

        • ぷらら(NTTぷらら)アクセス網の最寄りBRAS/収容ルータ付近。
        • plala.or.jp の逆引きがそれを示唆。

        3) 118.21.184.181(8/8/7ms)

        • ぷらら網の次段。逆引きが無いだけで中身は上と同系。

        4) i118-21-178-61.s99.a049.ap.plala.or.jp [118.21.178.61](6/5/10ms)

        • ぷらら網内の別ルータ。レイテンシ安定。

        5) 211.6.91.173(13/10/16ms)

        • ぷらら→NTT GIN への出口付近。ここから事業者バックボーンへ寄っていく。

        6) 60.37.54.165(8/6/14ms)

        • NTT網(地域ノード〜バックボーンの境界あたり)。

        7) ae-7.a04.tokyjp05.jp.bb.gin.ntt.net [120.88.53.25](103/8/12ms)

        • gin.ntt.net は NTTのグローバルバックボーン。
        • ae-7Aggregated Ethernet(束ねインタフェース)番号。
        • a04.tokyjp05東京(to ky jp)拠点群の装置a04 という命名。
        • 103ms は外れ値(一瞬のキュー詰まり or ICMP低優先度)。次ホップ以降は低遅延なので経路自体は健全。

        8) * * *(タイムアウト)

        • 典型的な ICMP応答制限/フィルタ
        • 「ここを通れなかった」ではなく「応答を返さない設定」のことが多いです。

        9) ae-0.a03.tokyjp08.jp.bb.gin.ntt.net [129.250.5.203](9/12/9ms)

        • 同じく NTT GIN 東京内の別ルータ。
        • tokyjp08 へ装置が変わっている=同拠点内での横移動

        10) ae-1.meta.tokyjp08.jp.bb.gin.ntt.net [157.238.226.59](11/12/12ms)

        • ここが NTT GIN → Meta (Facebook/Instagram) のピアリング境界
        • meta ラベル付きの対向。ここで AS32934 (Meta) 側へ交通が渡ります。

        11) po4004.asw01.nrt1.tfbnw.net [147.75.221.42](8/9/13ms)

        • Meta側に入った最初のスイッチ群。
        • tfbnw.net = The Facebook Network(Metaのバックボーン)。
        • aswAggregation Switch と解釈されることが多い命名。
        • po4004Port-Channel(LAG) #4004 を示す典型。
        • nrt1東京拠点(Naritaコード)

        12) psw02.nrt1.tfbnw.net [173.252.66.63](29/14/26ms)

        • pswPeering/Provider Switch 系の命名で使われがち。
        • 東京POP内でさらに内部へ。29ms は軽いバースト。

        13) msw1aj.02.nrt1.tfbnw.net [129.134.80.237](22/56/31ms)

        • mswMetro/Backbone/Module Switch 的な命名に見えます(Meta固有の略称)。
        • 56ms は単発の揺れ。次ホップはふつうに低いので気にしなくてOK。

        14) instagram-p42-shv-02-nrt1.fbcdn.net [157.240.31.174](28/15/13ms)

        • 最終宛先(Instagramのエッジ)
        • fbcdn.net は MetaのCDNドメイン。
        • nrt1 が付いている=東京のエッジ/キャッシュで応答。
        • 数十ms以内で安定しており良好です。

        何が読み取れる?

        • 国内(東京)でMetaにピアリングし、そのまま 東京のInstagramエッジで応答。
        • 全体遅延は10〜20ms台中心で、局所的な外れ値(Hop7, 12, 13)はICMP優先度や瞬間混雑の影響。実アプリ遅延とは直結しません。
        • 経路は短く、ISP(ぷらら)→NTT GIN→Meta東京POP の理想的な流れ。

        ちょいテク(読み方のコツ)

        • ae-# = Aggregated Ethernet インタフェース番号
        • po#### = Port-Channel(LAG)番号
        • asw/psw/msw = 集約/ピアリング/コア系スイッチを示すことが多い接頭辞
        • tokyjp## / nrt# = 東京拠点(館やフロア違い)

        まとめ

        このトレースは、ぷらら→NTTバックボーン→Meta東京POP→Instagram東京エッジという非常に健全で近い経路です。アプリ体感も良いはず。Hop 7/12/13 の突発的な高RTTは 測定上の揺れとして扱ってOKです。必要なら、この経路も「路線図」風に可視化しますよ!
        プロンプト「Notion用のテキスト版を生成」

        「Notion用のテキスト版を生成」

     
     
    • 生徒が使っていそうなWebサイトをTracerouteしてみよう。 X.comとか、Google.com。FacebookとかAmazon.co.jpも面白い。
      • DNSやDCなどのサーバーを自前で使っている所と、ClooudFlareを使っている場所で見比べるのが個人的には好き。
     
     

    2.IPv4とIPv6の違いを学んだあとなら、比較もできる

    IPv4とIPv6の比較や、経路の違いを見るだけでも相当に面白い。 現在執筆している環境ではIPv6環境がなかったため、VPSのログを提示しておく。

    VPSからGoogleのDNSに到達するまでの経路(AI)


    ■比較表

    ホップ数
    IPv4
    IPv6
    GMO → NTT → Google
    GMO → JPNAP → Google
    経路タイプ
    トランジット
    ピアリング
    ホップ数
    9ホップ
    実質6ホップ
    遅延
    約1ms台
    約1ms台
    最適度
    高(最短距離)
    接続形態
    上位ISPを経由
    直接Googleへ到達

    IPv4

    IPv6

    ✅ IPv4 の経路解説

    ✅ IPv6 の経路解説

    • 1〜5:GMOインターネット内部バックボーン(AS7506)
      • → すべて東京データセンターのルータ。
    • 1〜5:GMOインターネット内部バックボーン(AS7506)
      • → IPv4同様、東京DCのルータ。
    • 7〜8:Google 東京PoP(AS15169)
      • → Googleのバックボーン入口。
    • 7〜9:Google 東京PoP(AS15169)
      • → Google側のIPv6バックボーンに直接入る。
    • 9:8.8.8.8
      • → Anycastで東京PoPが応答。
    📍 IPv4は「GMO → NTT → Google」という構成
     
    📍 IPv6は「GMO → JPNAP(IX直結)→ Google」という最短経路

    ■ なぜこうなるのか?(理由)

    IPv6による最適化

    • そもそもGoogle(AS15169)は世界中でIPv4よりIPv6を最適化する方針を持っている。
    • 各端末がグローバルIPを持ち、NATが不要(直通)できるため経路が効率化されやすい。
     
     

     

    3.ついでに、NSとか見ても面白い。

    • x.comの例
      • ※x.comのNSが、TwitterDNSのまま流用されていることが解る。
         
    • facebookとinstagramの比較
      • ※同じMetaのNSが使用されている
         
         

    まぁ…

    • MAPに落としこむとTracerouteの中身が見えるようになって面白いよ。
    • 実際の経路を指で追わせるだけで理解度が変わるんじゃないかな?
     
    …という話でした。長々と呼んでいただきThanks!
     
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